コンバージョン建築調査 / 東京中央郵便局 JPタワー
2つ目の宿題
コンバージョン建築の調査報告をしていきます。
−概要−
名称 − JPタワー
所在地 − 東京都千代田区丸の内二丁目7-2
最寄り駅 − 東京駅直結
事業主 − 郵便局株式会社・東日本旅客鉄道株式会社・三菱地所株式会社
設計管理 − 株式会社三菱地所設計
施工 − 大成建設株式会社
最高高さ − 約200m
敷地面積 − 11,600㎡
建築面積 − 8,527㎡
延床面積 − 212,000㎡
階数 − 地上38階、地下4階
構造 − 鉄骨造 / 一部鉄筋コンクリート造
工期 − 2009年11月〜2013年3月
竣工 − 2012年
建設費 − およそ876億円
用途 − オフィス・商業施設・郵便局・国際カンファレンス・駐車場
以前
建築年 − 1933年 (昭和8年)
設計者 − 吉田鉄朗(逓信省営繕課)
施工者 − 銭高組・大蔵土木
敷地面積 − 11,780㎡
建築面積 − 7,196㎡
延床面積 − 36,479㎡
構造 − 鉄筋コンクリート造
階数 − 地上5階・地下1階
↓
ブルーノ・タウトは「日本の新建築の最高峰」
アントニン・レーモンド「日本的解釈による現代建築がこの建物によって始まった」
ちなみに、タウトはこの時期に桂離宮や伊勢神宮も評価しました。
東京中央郵便局は、日本における近代建築の突破口、革命を象徴する存在とも言われています。それは、東京駅をはじめ歴史主義建築の時代だったんですが、この郵便局は機能主義モダニズムの形態をしています。しかしこの建築によって歴史主義から機能主義への転換には向かわず、帝冠様式(洋風が混じった和風建築)が台頭していきました。
東京中央郵便局の形態・デザイン
この建築は、装飾を排除し構造体をそのまま表現することによって「ありのままの造形美」造形美を目指しました。「形態は機能に従う」モダニズム建築と言われています。
ファサードには、垂直に伸びる柱と水平方向の梁があり、その間に大きな開口部があるだけで壁が排除されており、建築を構成する最小限の要素だけで構成されています。当時、ヨーロッパではコルビジェがドミノシステムを発表した後であり、当時の世界最先端の建築理論を導入した建築です。
中央郵便局はコルビュジエのサヴォワ邸やスイス学生会館が建てられた時期がほぼ同時期です。如何にモダニズムを意識して建てられたかが伺えます。
当時は地上5階建てで、1階から3階まではほぼ同じ窓の大きさになっていて
窓ガラスはやや横長なプロポーショ3×4の12枚でひとつの窓になっています。
しかし4階部分の窓を見てみると少し縦に小さな窓になっていて、窓の窓割りは3×3。
5階の窓割りは3×2と上の窓ほど小さくなっています。
これは古代ギリシャ神殿柱の「エンタシス」と同じです。
エンタシス・・・柱の上の方をやや細くすることでより建物を大きく、かつ安定感があるように見せる効果「遠くは小さく見える」という遠近法を逆手に取った巧妙な発想で実際より小さくすることで、より遠くあるように見せかける仕組み
この中央郵便局の場合は、上の窓をやや小さくすることで、下から見上げた時に
実物以上に建物が大きく見えて迫力が出ます。4階と5階を区切り、より遠くにあるよう迫力のあるファサードにしています。
視覚的な効果を数学的操作だけでやっていて「造形」で美を追求する哲学は、モダニズムの精神と言えると思います。そして、見栄えと構造を両立して作り上げた建築です。
このような所以が、単なる西洋建築の模倣ではなく、日本独自のモダニズム建築が始まったと言われています。
しかし、コンバージョンや高層棟にすることによってこのような建築的な意味合いは薄れていきますが、現在の東京駅の目の前にあるこ好立地の条件。そして周辺建物も、低層部のボリューム・ファサードは継承し高層棟へと、ぞくぞく建て替え
られているため
資本主義である、時代の流れかもしれません。
旧東京中央郵便局は、このような経緯がありました。
次回は、コンバージョン後の東京中央郵便局について触れていきたいと思います。