コンバージョン建築リサーチ・KIITO (1/2)
神戸・三宮には「デザインクリエイティブセンター」なるものが存在します。
その名はKIITO(きいと)。
1927年に竣工した生糸検査場が2012年に、上記のデザインクリエイティブセンターとしてコンバージョンされた建物です。神戸で暮らす全ての人が集まり、話し、つぎつぎに何かを生み出していく場所。 だそうです。
よくわからないですねえ。
僕が在籍する神戸芸術工科大学や、その学生も含め神戸でデザインに携わる者なら皆何らかのかたちでKIITOとの関わりがあるようです。神戸では重要度高めです。
と言いつつ僕自身はKIITOがなんなのか全然知りません。近ごろ流行りの地域と関わるワークショップ系のなにか、か?という程度の認識です。
コンバージョン建築リサーチという宿題が出ているちょうどいい機会なので、KIITOとはなんなのか、都市に対してどんな意義があるのかを考えたいと思います。
・周辺について
まずは所在地を僕の大好きな航空写真で見てみましょう
現KIITO、旧神戸市立生糸検査所は、20世紀初頭の日本の主力な輸出品だった生糸の品質を管理する建物でした。
現在も倉庫が並ぶエリアで向かいは神戸税関。幹線道路も近く流通系のインフラに直結した立地です。
その反面、都心と言えるJR三ノ宮駅からは徒歩20分とやや遠く、自動車の交通量は多いのですが歩行者でにぎわっているとは言えない場所です。
神戸といえば港町のイメージですが人通りのない海岸線が意外と多く、中心地と海岸に隔たりがある都市構造を持っています。つまり良さそうな建物があるからと言って、安易に商業施設等にコンバージョンできないというわけです。
ちなみに、阪神高速の下をくぐる国道174号線は日本で一番短い国道だそうです。
・空間について
細かい情報は後にしてとりあえず目に見える印象を書きます。
西側ファサードです。4階建てと高くはないのですが、20年代末のゴシック風建築です。垂直性です。設計は清水栄二という当時の神戸市営繕課の建築家で、つまりお役所のデザインだったというわけです。
増設されたガラスの庇と装飾です。蚕の頭部がモチーフとのことです。蚕の頭部がどんな形か知りませんが。
生糸検査所ということで当時の設備の展示室もあります。かっこいい。
以下、内観写真をずらずらと。
大きな開口は無く、常にどこかは薄暗い建築です。
築80年超ということで、あらゆる設備がむき出しで追加されています。
用途の無くなった大小さまざまなスケールの残余空間がギャラリーやレクチャー等に使われます。
雰囲気は良いが特別優れたコンバージョン建築というわけでもない気がします。
大きく建築に手を加えている部分は無く、とにかく何かに使えそうなたくさんの空間を三宮に用意した。という印象です。そこで、建物をどう利用しているかというソフト面に注目して考えていきます。
(つづく)